
【院長コラム】お腹の「エコー」で何が見える?
こんにちは。さいたま市浦和区、浦和駅西口ミモザクリニック院長です。当院では女性が安心して受けられる消化器内科検診を目指しています。
今回は、健康診断や人間ドックでもおなじみの「腹部超音波検査(腹部エコー)」について詳しく解説します。痛みがなく、放射線の被曝もないこの検査ですが、実は「事前の準備」が結果の精度を大きく左右します。皆さんの受ける検査がさらに有意義になるために、なぜ食事を抜く必要があるのか、何が見えるのか、そのあたりをお伝えしたいと思います。
1. 腹部超音波検査(腹部エコー)とは?
超音波検査は、耳には聞こえない高い周波数の音波を体に当て、その反射(エコー)を画像化する検査です。
- 身体への負担が極めて少ない:放射線を使用しないため、妊娠中の方や短期間に繰り返し検査が必要な方でも安心して受けられます。
- リアルタイムの観察:臓器の形だけでなく、血流の状態や動いている様子をその場で確認できます。おなかが痛い場所を確認することができるのも特徴です。
- 迅速かつ簡便:検査時間は5~10分程度。ゼリーを塗ったプローブ(探触子)をお腹に当てるだけで、多くの情報を得ることができます。

2. エコー検査が「得意な臓器」とわかる病気
腹部エコーが特に威力を発揮するのは、肝臓、胆嚢、膵臓、腎臓、脾臓といった「実質臓器」の観察です。日本超音波医学会や消化器がん検診学会のガイドラインでも、これらの臓器のスクリーニングにおいて第一選択の検査とされています。
- ① 肝臓(脂肪肝、肝硬変、肝がんなど)
- 「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓は、自覚症状が出にくいため定期的なチェックが不可欠です。
・脂肪肝: 30代以降の女性でも、食生活やホルモンバランスの変化で増加しています。エコーでは肝臓が白く(高輝度に)写るのが特徴です。
・肝腫瘍: 腫瘍の有無や大きさを確認します。血管腫や嚢胞といった良性の腫瘍、肝臓がん、転移性肝腫瘍なども確認することができます。
- ② 胆嚢(胆石、胆嚢ポリープ、胆嚢がんなど)
- ・胆石症: 強い腹痛(胆石発作)の原因となります。胆嚢炎のときは胆嚢の腫大や、胆嚢壁の肥厚といった、特徴的な画像を見ることができます。
・総胆管結石:肝臓、胆嚢から十二指腸にむけて胆汁が流れる管(総胆管)にも石が詰まり、痛みの原因となることがあります。
・胆嚢ポリープ:胆石症との違いとして、体の向きを変えても動きません。大きなものはがんとの鑑別が必要となります
- ③ 膵臓(膵がん、膵炎、膵嚢胞など)
- 膵臓は胃の背側にあり、非常に観察が難しい臓器ですが、膵管の拡張や腫瘤の有無をチェックします。特に膵がんは早期発見が難しいため、エコー検査は重要ですが、造影CTやMRI検査のほうが、より精度の高い検査となります。
- ④ 黄疸の鑑別診断
- 皮膚が黄色くなる、尿が褐色になるなどの症状があったとき、黄疸といいます。胆のうや、肝臓、胆管、膵臓の腫瘤や結石が原因であったり、急性肝炎が原因のこともあります。これらの診断をするために、超音波検査はとても有用です。
- ⑤ 腎臓(腎結石、腎細胞がん、嚢胞など)
- 尿路結石や、それに伴う腎臓の腫れ(水腎症)を診断します。
- ⑥虫垂炎、憩室炎、腸閉塞、虚血性腸炎などの腸疾患
- 炎症が強い場合、大腸の壁が厚いことや、虫垂の腫大が確認できます。条件によるので、見えないこともあります。胃がんや大腸がんの発見はエコーよりも内視鏡検査(胃カメラ、大腸カメラ)の方が優れています。
- ⑦ 便秘
- 直腸に便がたまっていることの確認ができます。直腸に便がたまっている場合、浣腸を使用することで便の排泄が期待できるので、便秘の治療の目安になることがあります。
- ⑧ 大腸脈周囲のリンパ節の腫大、腹水、子宮筋腫など
- 条件によりますが、貧血の原因になるような子宮筋腫や大動脈周囲の腹部リンパ節の腫大が見られ、悪性リンパ腫やがんなどの病気の発見につながります。
3. 検査精度を上げるために気を付けること
検査を受ける際には、以下のことを守っていただけると検査の精度があがります。「せっかく検査を受けたのに、肝心な場所が見えなかった」ということにならないよう、是非、気を付けてみて下さい。
- ① 検査前は「絶食」:胆嚢とガスの関係
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食べ物(特に脂肪分)が胃に入ると、胆嚢は溜めていた胆汁を出すためにギュッと収縮してしまいます。収縮した状態では、中にポリープや小さな結石が隠れていても見つけることができません。また、食事によって胃腸にガスがたまると、超音波が遮断され、その奥にある膵臓などが全く見えなくなってしまいます。
- ② 水分は「水」だけ:刺激を避ける
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お茶、コーヒー、ジュース、そして特に牛乳などの乳製品は、胃腸を刺激したり、胆嚢を収縮させたり、ガスを発生させたりします。検査当日の朝は、「水」のみにしてください。
- ③ 検査直前のトイレは我慢する
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子宮や卵巣などの骨盤内臓器を観察する場合、「尿を溜めた状態」が理想的です。 膀胱に尿が溜まっていると、それが超音波を通しやすくなり、その背後にある子宮や卵巣をクリアに映し出すことができます。尿が空っぽだと、腸管が邪魔をして観察が困難になります。検査の1〜2時間前からは排尿を我慢していただくのがコツです。
4.「膵臓(すいぞう)」はエコーで見えにくいのか?
コラムの中で「膵臓は観察が難しい」と触れましたが、これには理由があります。膵臓は胃の裏側、背中側に位置する「後腹膜臓器」だからです。超音波は空気(ガス)に弱いため、胃の中にガスがあると、それがカーテンのようになって膵臓を隠してしまいます。 だからこそ、「お腹を膨らませたり、凹ませたり」「体の向きを変えたり」と、さまざまな工夫をして、見えにくい膵臓の死角を少しでも減らす努力をしています。
5. 検査当日の服装
当日は、上下が分かれた(セパレート)服装でお越しください。ワンピースやボディスーツなどは、お腹を広く出す必要があるエコー検査では避けていただいた方がスムーズです。
6. 医学的な限界について(わかっていないこと・苦手なこと)
医療において「100%」は存在しません。超音波検査にも以下の限界があります。
- 深部の観察:皮下脂肪の厚い方や、腸管ガスが非常に多い方は、超音波が奥まで届かず、詳細な観察ができない場合があります。
- 性質の確定:「何かがある(腫瘤)」ことはわかりますが、それが良性か悪性かをエコーだけで確定させることはできません。疑わしい場合は、造影CTやMRI、あるいは組織診などの精密検査が必要です。
- 微細な変化:小さな病変は、最新機器でも検出できないことがあります。
まとめ
「なんだかお腹が張る」「ときどき、お腹が痛い」「肝臓の数値が高いといわれた」 そんなとき、身体への負担がない腹部エコーは、安心を得るための最初の検査となります。一度、受診のうえ、ご相談ください。